2015年9月に可決された
「公認心理師法」
によって、日本で初めて心理系の国家資格((これまでもっともメジャーな心理系資格とされていた「臨床心理士」は民間の資格です。))
「公認心理師(こうにんしんりし)」((すこし紛らわしいのですが「公認心理士」ではなく「公認心理師」です。))
が誕生しました。
公認心理師誕生の背景には
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バブル崩壊以降の経済的な要因による自殺数の増加
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人口動態の変化による家族関係の崩壊
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働き方の変化によるストレス増加
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事件・事故・天災などによる被害者や関係者に対する心理的なケアの必要性
などがありました。
少子高齢化がすすむこれからの時代、人のメンタルのケアはとても大事になります。
こんごは企業の産業カウンセラー雇用なども進むと思いますので、将来の需要増加に備えて早めに資格取得の準備をするのは良いかもしれません。
公認心理師は国家資格であり、名称独占資格でもある
公認心理師は国家資格であり、名称独占資格でもあります。((名称独占資格と業務独占資格は異なりますので注意してください。公認心理師は業務独占資格ではありません))
心理系の資格は、公認心理師以外にも
「臨床心理士」
のように非常に難易度の高い資格や、
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学校心理士
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臨床発達心理士
のような学士号取得者やそれに準ずる学歴を持っていないと受験すらできない、難易度が高い資格があります。
しかし、世間には
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○○○心理士
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○○○カウンセラー
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○○○心理師
などと自称する人がたくさんいます。
この中には受験すればかなりの確率で合格するような民間資格を取得してマスメディア等で活動する人たちもいます。
こんかい公認心理師が名称独占資格となったことによって
「○○心理師」
という肩書をメディア等で名乗ることができなくなりますので、玉石混淆と言える心理士風の資格取得者に対する牽制になります。
知識や経験が未熟な人物がメディアなどで活躍すると、専門家だと勘違いした視聴者・読者が誤った知識を付けてしまう危険があります。
公認心理師が名称独占資格となることによって○○心理師と名乗る人たちがいなくなるという世の中に対するメリットが生まれます。
臨床心理士との違い
公認心理師と臨床心理士との違いについて説明します。
公認心理師は大学院で学び、修了することが必要ではありませんが、心理系の資格で最もメジャーで難関な
「臨床心理士」
は受験資格に大学院の修了を設定しています。
さらに、ややこしいことに臨床心理士は民間資格で公認心理師は国家資格です。
なので臨床心理士を目指している大学生が途中で目標を公認心理師に変更することは起こりうることです。
そこで問題になるのは現在臨床心理士の資格を保有している人が公認心理師の資格を取得するかどうかです。
公認心理師は業務独占資格ではないので公認心理師の増加によってすぐに臨床心理士の仕事が脅かされるということはありませんが、将来のことを考えて取得できるなら取得しておこうと考える臨床心理士は当然いるでしょう。
これは良い悪いの問題ではなく自分の将来を安定させるためです。
日本は国策として自殺の防止やメンタルケアを掲げているのでの臨床心理士に不利になるような状況を作るとは思えず、実際に経過措置を法案にもり込んでいます。
最初のうちは混乱があるでしょうが、どこに着地するにせよゆるやかに着地できるように国が動くことは間違いありません。
今のところ
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臨床心理士にはできるけど、公認心理師にはできない仕事
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臨床心理士には出来ないけど、公認心理師には出来る仕事
という風な区別はありません。((どちらも業務独占資格ではないためです。))
求人募集の際の条件として臨床心理士の資格を必須としている求人は多いですが、公認心理師が増えたら必須資格の項目が公認心理師だけになるというのも考えづらいです。
募集する側としても臨床心理士と公認心理師の両方で募集をするか、もしくはしばらくは様子見として臨床心理士のみでの募集を続けるかのどちらかになると思います。
仕事内容について
公認心理師の仕事内容は、おおきくは
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心理査定(アセスメント)
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心理面接(カウンセリング)
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関係者への面接
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メンタルヘルスに関する教育と情報の提供
この4つとなります。
詳しくはリンク先を確認してください。
リンク先では臨床心理士との仕事内容の違いなどについてもふれています。
受験資格や試験内容について
公認心理師の受験資格は以下の3つです。
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大学と大学院で公認心理師になるのに必要な科目を卒業・修了した人
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大学で必要な科目を修了して、文部科学省・厚生労働省が指定する心理支援業務に2年以上従事した人
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文部科学大臣及び厚生労働大臣が公認心理師資格受験にふさわしい知識と経験を持つと認定した人
受験資格や試験の内容について、くわしくはリンク先で確認してください。
公認心理師の就職先について
公認心理師の就職先ですが、2018年2月現在でまだ有資格者がいません。
なので確かなことはわかりません。
しかし、公認心理師は心理系で唯一の国家資格なので、高く評価される資格なのは間違いありません。
よって、おそらく臨床心理士と並ぶような形でスクールカウンセラーや産業カウンセラーの求人において公認心理師の資格が求められるようになると思います。
つまり臨床心理士と勤務先は被り、一般企業や学校が多くなるのだと予測しています。
給料などの待遇についても臨床心理士との比較では劇的な改善があるとは思えず、需要と供給のバランス、ならびに負担の多さと金銭的な報酬のバランスは歪んだままスタートすることになると思います。